2017年7月21日(金) ティロラー・フェストシュピール 「セミラーミデ」

クーフシュタインの場合には開演1時間前にエルル行き無料シャトルバスを運行している。ところがそれが来ない。開演30分前になってしまったので焦ってホテルで事情を説明し、タクシーを呼んでもらった。何とか開演前に到着し、トイレに行き、エスプレッソを飲む時間はかろうじてあったが冷や汗ものだった。今日の会場はフェストシュピールハウスだが、下のバーのおばさんが覚えていてくれ、近づくとすぐにさっとエスプレッソを出してくれたのも助かった。

指揮 グスタフ・クーン、総合プロダクション フローレ・ディ・モンテグラル、舞台装置 アルフレッド・トロイシ、衣装 レンカ・ラデッキー。セミラーミデ マリア・ラドエヴァ、アッスール ジョヴァンニ・バッティスタ・パドーリ、オローエ ラファエル・ジグリンク、アルサーチェ スヴェトラーナ・コティナ、アゼーマ マリア・ロザリア・ロパルコ、イドレーノ フイ・ジン、ミトラーネ ジョルジョ・ヴァレンタ、ニノス王 シモン・チョジナーキ、オーケスター・デア・ティロラー・フェストシュピーレ・エルル。

6時開演。座席は1列目23番。左側ブロックの一番中央寄り。実に良い席で、クーンが時々声を上げるのも聞こえる。この日の日本人聴衆はは私のみだったようだ。若い女性が中断右手に座っていたが、ひょっとすると日本人だったかもしれない。)。私はこの日は濃紺の背広。

第1幕第1場。幕が開くと第1次世界大戦時のパイロットのゴーグルのようなものを付けたアッシリアの群衆が変な動作で行進をする。舞台は手前に舞台全体が台形状になるような移動式仕切り壁。舞台最後部には燦然と豪華に輝くタイルのようなものが張り付けられている。その手前には階段状に高くなってゆく奥の舞台。その中央部分には台座の上に乗った直径2m程度はありそうな聖水盤(お椀状)のようなもの。

このオペラでは主要登場人物が6名。そして彼らが順次出てくるが、このプロダクションではその6人が誰なのか聴衆が容易に理解できるような工夫がなされている。すなわちセミラーミデは赤の衣装にライオンの彫像、アルサーチェは青の衣装にキリンの彫像、アッスールは紫の衣装に象の彫像、イドレーノは黄色の衣装に馬の彫像、オローエは黒の衣装に猿の彫像、アゼーマは白の衣装に白鳥の彫像といった具合である。さらにイドレーヌには腰から青の帯のようなものが伸び、それを3人の美女が捧げ持つ。アッスールには3人の黒装束の手下(バレエ)が付き従い、各々剣。王冠、あるいは遺言書を持っている。セミラーミデは素肌の上に赤いレースを張り付けたような実に妖艶ないでたちで、真紅のマントを翻している。ソフィア生まれのマリア・ラドエヴァは舞台上で実に美しいばかりでなく、声量もあり歌も実にうまい。そしてフイ・ジン。北京生まれの彼はコンピュータ科学を学んだ後、テキサス・クリスチャン大学で歌唱を学び始めたという経歴の持ち主だ。ほとんど実績がないようだが、声量と言い、歌唱力と言い、なんとも素晴らしい。

第2場になると天井から赤い花がしだれ、舞台はさらに華やかになる。セミラーミデは赤の薄手のドレスを着ており、これがまた美しい。アルサーチェが現れ、セミラーミデとの二重唱となる。第2場が終了し幕が下りると、序曲?が奏され、それが終わるとここで休憩。

第1幕第3場。セミラーミデはアルサーチェを自分の夫とし、アゼーマをイドレーノの妃にすると宣言する。彼女がオローエに結婚式の準備をするように命ずると雷鳴が轟き、ニーノ王の亡霊が出てくる。彼はメガホンを使い大音声でアルサーチェに王位を継ぐ前に自分を殺害したものを倒さねばならないと言うが、誰を倒さねばならないのかと言う彼の問いには答えない。(幕)。ここで2回目の休憩。

第2幕第1場。実は15年前にセミラーミデとアッスールは共謀してニーノ王を殺害したのだが、今回の結婚の発表ではアッスールに対する見返りが全くないので彼は怒る。そして彼は彼女に脅しをかける。第2場アルサーチェが神殿に現れるとオローエはアルサーチェこそがニーノ王の息子のニーニャ王子であることを明かし、王の遺言書を見せる。それには彼を殺害した犯人のセミラーミデとアッスールを誅殺するよう彼に命じていた。動揺するアルサーチェ。第3場。セミラーミデの決定にアルサーチェとの仲を裂かれたことをアゼーマが嘆いている。そこに通りかかったイドレーノが彼女への愛をささやく。アゼーマは彼にやさしいそぶりを見せた後、髪を引っ張って彼をいたぶる。第4場。セミラーミデの部屋。アルサーチェが自分との結婚に気乗りがしていないようなのをセミラーミデは訝しく思い、なぜなのか彼を問い詰める。彼はしぶしぶ亡き王の遺言書を見せる。彼が失踪した自分の息子であることを知った彼女は、自分を殺しニーノ王の仇を撃てと言う。第5場。オローエが民衆にニーノ王殺害の真相を語り、これで自分が王位継承をすることは\xCC

気唎覆辰燭版Ъ韻靴織▲奪后璽襪呂修譴任皀▲襯機璽船Г鮖Τ欧靴茲Δ肇法璽硫Δ良席茲妨類ǂΑB\xE86場。王墓にオローエに率いられた人々が入り、それにセミラーミデとアルサーチェが続く。暗闇の中でアッスールの声を聴いたアルサーチェは戦いを挑む。アルサーチェは手ごたえを感じたが、彼が殺害したのはセミラーミデであった。兵士たちに連行されていくアッスールかその事実を知らされたアルサーチェは自殺を図ろうとするがオローエたちに引き留められる。そして彼は霊廟の外で民衆からの新王誕生の歓喜の声に包まれる。(幕)

実に素晴らしいスキの無い舞台であった。キャスティングには一つのミスもなく、演出、舞台装置、衣装等も実に素晴らしかった。やはりクーンは指揮に集中し、プロダクションには適切な人選をするのがよさそうだ。昨年の「ギョウム・テル」をはるかに凌駕する出来で、これではペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルも顔色なしだろう。今回の公演は間違いなく世界最高水準のものであったと言える。

熱狂的な聴衆の称賛を浴びたが、ここの聴衆の多くはこの劇場から離れた場所に帰らねばならない。ほどなく聴衆は劇場を出た。私も無事クーフシュタイン行きのバスに乗車。その大型バスが発車するとクーフシュタインとは反対方向に向かい始めたので焦る。恐らくドルフまで行ったのだろう。そこで乗客の何人かを下ろし、もと来た道を戻り始めた。ところどころで乗客を降ろしてクーフシュタインに戻った。バスを降りると未だバーやレストランが明るく輝くウンタラー・シュタットプラッツの坂道を下り、頭上に優雅な渡り廊下が渡されているレーマーホーフガッセまで行ったが、この時間から食事が静かにできそうなレストランが見つからず、ホテルに戻った。休憩時にフランクフルター・ヴュルステルを食べておいたのは正解だった。